彼が実家に帰るというので、ついていったことがある。出迎えてくれたのは、ご両親と、同じく帰省していた2人の妹ちゃんだった。
彼らは私を温かく迎え入れてくれた。
特産牛のBBQをご馳走になったり、乗馬が趣味なのを知っていて馬と触れ合える場所に連れて行ってもらったり、その家のお雑煮のレシピを教わったりした。夜は居間でみんなでテレビを見て過ごした。彼が冗談を言うと妹ちゃんが「意味わかんない」と笑っていて、ご両親も笑っていた。
そこには信頼関係、安心、絆があり、絵に描いたような家族だった。
「家族、仲良しだね」と彼に言うと、「そう?」とキョトンとされた。家族なんだから、これくらい普通じゃない?というような返事だった。
私の家はそうではない。
帰りの飛行機で彼に『俺もそっちの家族に会っとかないとね』と言われたときにギクっとした。
いやだとは言えなかった。
彼に、真剣に付き合っていると思って欲しいし、申し出自体は素直に嬉しかった。
でも、うちはみんな揃ってテレビを見るような家庭じゃない。なんとも説明しづらいが、母は人様に紹介できるような人ではないし、父なんて5年くらい会っていない。何より、家族とうまくいってない私を知られるのが恥ずかしい。
とりあえず、『そのうちね』と言って誤魔化した。
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